「ヘッドスピードは出ているのに、なんで飛ばないんだろう。」
練習場の計測器で測ってみると、こういう方がよくいらっしゃいます。ヘッドスピードの数字は悪くないのに、ボール初速(ボールスピード)が思ったより出ていない。
ここに、ひとつ面白い数字があります。PRGRの計測データでは、女子プロと男性アマチュアのヘッドスピードの平均は、どちらも40m/s。同じ速さです。それなのに、女子プロのほうが30ヤードくらい飛んでいます。
ALBAが弾道測定器のトラックマンで女子プロ33人のドライバーを測ったデータでも、ヘッドスピードの平均は40.7m/s。それで、キャリーは216.8ヤード、転がりを入れて244.2ヤード飛んでいました。
同じ速さで振って、30ヤード。この差は、どこから来ているのでしょうか?

先に答えを書きます。差がつくのは、飛びの3要素(ボール初速・打ち出し角・スピン量)の整い方です。体を一生懸命動かしてヘッドスピードを上げるより先に、ドライバーというクラブを理解して、この3つを整える。これが、多くの方にとって飛距離を伸ばす近道です。
この記事は、ドライバーの取扱説明書です。次の順番でお伝えします。
- ドライバーの飛距離を決める「飛びの3要素」
- ドライバーの5つの性質
- 原則1 ボール初速は、ミート率が先
- 原則2 打ち出し角は、構えとティーで決まる
- 原則3 スピン量は、芯で決まる
- 芯は、当てにいくほど外れる
- 練習場でやること3つ
ドライバーの飛距離は「飛びの3要素」で決まる
ボールがどこまで飛ぶかは、3つの数字で決まります。ボール初速、打ち出し角、スピン量です。
ボール初速は、ボールがフェースから飛び出したときの速さです。打ち出し角は、ボールが飛び出す上下の角度。スピン量は、ボールにかかる回転の量で、多すぎると吹け上がって前に進まず、少なすぎるとすぐに落ちてしまいます。
この3つは、別々に動いているわけではありません。たとえばボールをすくい上げると、インパクトでロフトが増えます。すると打ち出しは上がり、スピンは増え、初速は落ちる。1つの動きで3つ全部が変わります。

この記事では、この3つを1つずつ整える考え方を「飛距離アップの三原則」としてお伝えします。
ドライバーの5つの性質

三原則に入る前に、ドライバーがどんなクラブなのかを知っておきます。ここが分かると、三原則の「なぜ」がつながります。飛びに関わる性質を5つ紹介します。
①一番長くて、シャフトがしなる
ドライバーは、14本の中でいちばん長いクラブです。長いぶん、シャフトのしなりも大きく使えます。
しなりは、自分で作るものではありません。体が先に動いて、ヘッドが遅れてついてくる。その引っ張り合いの中で、勝手にしなって、勝手に戻ってきます。カナダの大学の研究でも、インパクトの瞬間、シャフトはボールの方向へ数センチしなった状態で当たっていると示されています。インパクトのときも、シャフトはまっすぐではないということです。
では、どうすればシャフトはしなるのか。やることは3つです。
1つ目は、グリップの圧力を弱くすること。マックスの20%くらいが目安です。強く握ると、体と腕とクラブが全部一緒に動いて、ヘッドが遅れてこないので、しなりが生まれません。
2つ目は、切り返しで、クラブが上がり切る前に胸から回り始めること。クラブはまだ上がろうとしているのに、体はもう戻り始めている。この引っ張り合いで、シャフトはしなります。
3つ目は、切り返しから少しずつ加速すること。インパクトのスピードを10だとしたら、トップから1、2、3と少しずつ上げていき、ボールのところで10になる。溜めておいて最後に一気に10にすると、しなりが戻るタイミングがずれて、フェースの向きもぶれやすくなります。
しなりを作りにいくと、かえってシャフトは暴れて、戻る力を使えません。くわしくは「ゴルフでシャフトのしなりを感じない理由」の記事にまとめています。
関連記事:ゴルフでシャフトのしなりを感じない理由|右手の人差し指で受け止めていないから
②重心が、シャフトの延長線上にない
クラブは、シャフトの延長線上に重心がありません。重心がずれている分、振られる勢いの中で、ヘッドにはフェースを閉じる向きに戻ろうとする動きが生まれます。手首を自分でほどきにいかなければ、この動きと体の回転で、フェースは戻ってきます。
もうひとつ、ドライバーはヘッドが大きく、重心がフェースから離れたところにあります。そのため、少しくらい芯を外しても、ヘッドがブレにくい作りになっています。手首の使い方は「ゴルフの手首は『自分で曲げない』が近道」の記事でくわしく書いています。
関連記事:ゴルフの手首は「自分で曲げない」が近道|クラブの勢いで曲げられる3ステップ
③反発が高い
ドライバーのフェースは、ルールで上限が決められているくらい、よく弾むように作られています。
同じヘッドスピードでも、芯で当たるほど、この反発を使い切れます。逆に芯を外すと、せっかくの反発が初速になりません。
④ロフトが立っている
ドライバーのロフトは10度前後で、パターを除けば14本の中でいちばん立っています。レッスンでもよく言うのですが、ロフトが立てば立つほど、ボールスピードは出やすくなります。ただし、立てすぎると球が上がらなくなるので、いま使っているロフトを替える必要はありません。
⑤ボールに触れているのは、約0.4ミリ秒
ヘッドがボールに触れている時間は、0.0004秒ほどしかありません。その間に、ヘッドは2センチほどしか進みません。
インパクトでフェースの向きを合わせようとしても、手で押し込もうとしても、間に合わない時間です。ボールがどう飛ぶかは、ヘッドがボールに届く前の状態で、ほぼ決まっています。だから、インパクトで何かをしようとしなくて大丈夫です。
5つとも、全部覚えなくて大丈夫です。しなりも、重心も、反発も、ロフトも、ドライバーが自分で仕事をしてくれる性質です。そして0.4ミリ秒は、その仕事に手で割り込む時間はない、ということでした。

原則1 ボール初速|ミート率が先、ヘッドスピードはあと
飛びの3要素は、3つとも大事です。そのうえで、最初に上げるのはボール初速です。
打ち出し角とスピン量は、初速があってはじめて効いてくる調整役です。初速が足りないまま角度と回転を整えても、伸びる幅は小さい。逆に初速が上がれば、同じ角度と回転のままでも、ボールは遠くへ飛びます。
初速は「ヘッドスピード」と「芯」で決まる
ボール初速は、ヘッドスピードと、どれだけ芯で当たったかで決まります。この芯の度合いを数字にしたのがミート率で、ボール初速をヘッドスピードで割った値です。
ここで順番があります。ミート率を上げるのが先で、ヘッドスピードを上げるのはそのあとです。ドライバーなら、ミート率1.45以上がひとつの目安です。冒頭の女子プロ33人の平均は1.5でした。
力んでヘッドスピードを上げにいくと、芯を外しやすくなって、ミート率が下がります。そうなると、ヘッドスピードは上がったのに、初速はほとんど増えません。冒頭の「ヘッドスピードは出ているのに、初速が出ていない」は、まさにこの状態です。

初速から、飛距離を見立てる
レッスンでは、初速から飛距離を見立てることがあります。初速(m/s)に4を掛けると、転がりも入れただいたいの飛距離(ヤード)になります。初速が60m/sなら、240ヤードくらいです。
冒頭の女子プロの数字で確かめてみます。ヘッドスピード40.7m/sにミート率1.5を掛けると、初速は約61m/s。4を掛けると約244ヤードで、実際の244.2ヤードとほぼ同じです。同じ40m/sでも、どれだけ初速にできるかで、飛距離はここまで変わります。
自分のヘッドスピードとミート率で、どこまで飛ばせるかは「ドライバーの飛距離ポテンシャル」の記事で計算できます。
関連記事:ヘッドスピードから飛距離を計算|ドライバーの飛距離ポテンシャルと、合う打ち出し角・スピン量
この原則の練習は、タオルを使います。先端を結んだタオルを、自分の力の20%くらいで握って連続で素振りをします。ブンと音がするくらい振れたら、同じ力感のままクラブに持ち替えてください。
原則2 打ち出し角|構えとティーで決まる
ドライバーの打ち出し角は、ほとんどがロフトで決まります。だから、自分で上げようとしなくて大丈夫です。上げようとしてすくうと、インパクトでロフトが増えて、初速は落ち、スピンは増えて吹け上がります。
自分で上げにいく代わりに、構えとティーの高さで、ボールが上がりやすい状態を先に作っておきます。
体を少し右に傾けて構える
ドライバーは、クラブが少し上がりながらボールに当たる(アッパーブロー)と、打ち出しが上がってスピンが減り、飛距離が伸びやすくなります。
そのために、構えで上体をわずかに右に傾けます。右肩が左肩より少し下がるくらいです。こうしておくと、クラブが一番低い所を通ったあと、上がっていく途中でボールに当たりやすくなります。
体を右に倒したら、手も一緒に右へ回り込む
体を右に傾けると、連動して手も右に回り込みます。手だけを元の位置に残さないでください。体の傾きと手元の関係が変わらないまま構えられるので、アッパーで当たりやすくなります。
ボールの位置は変えずに、ヘッドの先のほうで構える
クラブが上がりながら当たるので、構えたときと当たるときで、フェースのどこに当たるかがずれます。フェースの真ん中にボールを合わせて構えると、根元側に当たりやすくなります。
ここで、ボールの位置を右足寄りに動かすのはやめてください。クラブが下から入りにくくなって、別のミスが出ます。動かすのは、構えたときのヘッドの位置です。ボールがフェースの先のほうに来るように構えて、上がってきたときにちょうど真ん中で当たるようにします。

ティーは、フェースの真ん中で構えて、ボールが半分出る高さ

ティーの高さは、ヘッドの真ん中にボールを合わせて地面に置いたときに、ボールの半分くらいがフェースの上から出る高さが目安です。高さを決めるときだけ真ん中で合わせて、打つときは先のほうで構えてください。

オンラインレッスンの受講生で、100前後のスコアのシニアの方がいました。ドライバーの当たりが安定しない原因のひとつが、ティーがこの目安より1センチ以上高く、芯に当たりにくくなっていたことでした。芯の少し上に当たるくらいなら飛ぶこともありますが、高すぎるとフェースの上の端まで外れて、スピン量も飛距離も安定しません。
原則3 スピン量|芯で決まる
スピン量を決める一番大きなものは、芯で当たるかどうかです。芯は、初速とスピン量の両方に効きます。
芯は、数ミリしかない
レッスンでよくお伝えするのですが、クラブの芯は数ミリしかありません。大きなヘッドのどこに当たっても同じ、とはいきません。
その数ミリを外すと、何が起きるか。2つあります。
芯を外すと、初速が落ちる
1つ目は、初速です。③で書いたとおり、ドライバーは反発が高いクラブです。その反発を使い切れるのは、芯で当たったときだけ。外すほど、同じヘッドスピードでも初速は出なくなります。
②の重心の話で、ドライバーは芯を外してもブレにくいと書きました。それでも、外せば初速は落ちます。ブレにくいのは、損を小さくしてくれる作りだからで、損がなくなるわけではありません。
芯を外すと、スピンが変わる
2つ目は、スピン量です。芯を外すと、当たった衝撃でヘッドが回り、ボールにかかる回転が変わります。
フェースの上下でいうと、芯の少し上に当たると、スピンが減って打ち出しが高くなります。芯より下に当たると、スピンが増えて打ち出しが低くなります。下に当たった球が、低く出て吹け上がり、前に進まないのはこのためです。
左右でいうと、トウ寄り(先っぽ)に当たると、当たった衝撃でヘッドが開く向きに回り、その反対で、ボールにはフックの回転がかかりやすくなります。そして極端に先に当たると、フェースが開いた分が勝って右へ飛んでいきます。ヒール寄り(根元)に当たると、スライスの回転がかかりやすく、極端に根元に当たると、フェースが閉じて左へ低く飛びます。

左右にずれるのは、腕を振ってクラブを操作するから
打点が先や根元に散る方は、腕を振ってクラブを操作していることが多いです。腕でクラブを動かそうとすると、シャフトが横に暴れて、ヘッドの通り道が毎回ずれます。体の回転で振って、腕でクラブを動かしにいかない。これで、左右のずれは小さくなっていきます。
上下にずれるのは、体の回転が止まるから
打点が上下に散る方は、スイングの途中で体の回転が止まっていることが多いです。回転が止まると、体が起き上がったり沈んだりして、クラブが一番低くなる所が毎回変わります。体の回転が止まらなければ、ボールに当たるまで前傾は崩れません。前傾を保とうと構えを固めるより、体の回転で振り切ることを先に意識してください。
フェースの向きは、しなり戻りに任せる
芯で当たっても、フェースが開いたり閉じたりしていると、回転の向きが傾いて曲がります。ここでも①のしなりが効いてきます。切り返しから少しずつ加速すると、シャフトのしなりが戻るのに合わせて、フェースが戻ってくる時間ができます。手でフェースを返しにいくと、しなり戻りの邪魔になります。
この原則の練習は、左手1本でタオルを持ち、体を回しながら、タオルを目標方向へ投げるように振る練習です。体の回転でエネルギーを出しつつ、クラブの進む方向はまっすぐに保つ。ヘッドスピードとミート率を両立させる練習です。
芯は、当てにいくほど外れる
ここまで読むと、「よし、芯に当てにいこう」と思うかもしれません。ところが、芯は当てにいくほど外れます。
⑤で書いたとおり、ボールに触れているのは約0.4ミリ秒です。インパクトで合わせにいくと、手の動きでクラブの通り道がずれます。通り道がずれれば、フェースのどこに当たるかも散ります。
僕自身、研修生のころに毎日500球打って、インパクトで合わせながら打つスイングが身についてしまいました。当てにいくほど当たりは不安定になり、飛距離も出ませんでした。
体が先に動いて、クラブがあとからついてくる。クラブの動きと体の動きのタイミングが合っていれば、打点はあとから揃ってきます。打点と軌道の関係は「ゴルフの方向性が安定しない原因」の記事でくわしく書いています。
関連記事:ゴルフの方向性が安定しない原因|フェースの向き・軌道・打点を別々に直さず、軌道から整える
練習場でやること3つ
スイングの中身を変える前に、止まった状態で直せることから始めてください。打ち方を変えずに、芯に当たる確率を上げられます。
1. 構えを整える
上体をわずかに右に傾け、手も一緒に右へ回り込ませる。ボールの位置は変えずに、ヘッドの先のほうで構えます。
2. ティーの高さを決める
ヘッドの真ん中で合わせて、ボールが半分出る高さにします。
3. 打点シールで、答え合わせをする

構えとティーを整えたら、フェースに打点シール(ショットマーカー)を貼って、5球ほど打ってみてください。自分では真ん中で打っているつもりでも、実際の跡は違うところに付いていることがよくあります。感覚と実際は、ずれるものです。
根元側に跡が集まるなら、ボールに近づきすぎていないかを見ます。近かったら、少し離れて構える。それだけで変わることがあります。
打ったあとは、ボールの行方を確かめて、フェースのどこに当たったかを見て、最後にクラブの通り道がどうだったかを思い出す(動画を撮っていれば、ここで見る)。この順番で見ると、次の1球で何を変えればいいかがはっきりします。
なお、グリップの圧力が強い方や、体が回らずに腕だけで振っている方は、構えを直しても当てにいく動きが残って、打点が散ります。グリップの圧力が強い方は、マックスの20%くらいまで緩めるところから。腕だけで振っている方は、先に体の回転で振ることからです。こちらは「力いっぱい振っても飛ばない本当の理由」の記事で順番に書いています。
関連記事:力いっぱい振っても飛ばない本当の理由|力を入れるタイミングが早すぎる
よくある質問
Q. ヘッドスピードを上げれば、飛距離は伸びるのでは?
伸びます。ただし、芯で当たっていればの話です。力んでヘッドスピードを上げにいくと、芯を外してミート率が下がり、初速が増えません。先にミート率を上げて、そのあとヘッドスピードを上げる。この順番なら、上げた分が初速に乗りやすくなります。
Q. ミート率の目安はどれくらいですか?
ドライバーなら1.45以上がひとつの目安です。冒頭の女子プロ33人の平均は1.5でした。計測器がない場合は、打点シールで跡が真ん中に集まっているかを見るのが、いちばん手軽な確かめ方です。
Q. 新しいドライバーにすれば、芯は広がりますか?
芯そのものが広がるわけではありませんが、芯を外したときの損は、最近のドライバーほど小さくなっています。僕自身も新しいドライバーを使っていて、道具の進化は飛距離の助けになると感じています。ただ、インパクトで当てにいく打ち方のままだと、その性能を使い切れません。新しいクラブの良さを引き出すためにも、構えと打点の確認から始めてみてください。
Q. ティーを高くしたほうが飛ぶのでは?
芯の少し上に当たるくらいなら、打ち出しが上がってスピンが減るので、飛ぶこともあります。ただ、高すぎるとフェースの上の端に当たりやすくなって、スピン量が安定しません。まずは、フェースの真ん中で構えてボールが半分出る高さを基準にして、打点シールの跡を見ながら調整してください。
まとめ

飛びの3要素は、ボール初速・打ち出し角・スピン量です。これを1つずつ整えるのが、飛距離アップの三原則です。
- 原則1 ボール初速:ミート率を上げるのが先。ヘッドスピードはそのあと
- 原則2 打ち出し角:自分で上げにいかない。構えとティーの高さで決める
- 原則3 スピン量:芯で当てる。腕で操作せず、体の回転で振る
そして、芯は当てにいくほど外れます。しなりも、重心も、反発も、ロフトも、ドライバーが自分で仕事をしてくれる性質です。
体を一生懸命動かす前に、ドライバーを知る。構えを直すだけで、芯で当たる球が増えて初速が上がる方もいます。芯で当たるようになってから体を鍛えれば、鍛えた分が初速に乗りやすくなっていきます。
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