「『クラブに仕事をさせる』とよく聞くけれど、ピンと来ない」
「ラウンド前日の練習では良かったのに、当日はまるで別人のスイングになる」
そんな方に、先に結論をお伝えします。
クラブに仕事をさせるとは、クラブの勢いを使って振ることです。クラブには、動き出したら動き続けようとする性質(慣性)があります。その勢いを、自分で止めたり、足したりしない。
ボールとフェースが触れているのは、1万分の5秒ほど(0.0005秒)しかありません。その間に、ヘッドは2センチほどしか進みません(ヘッドスピード40m/sのとき。測り方・ヘッドスピード・ボールによって、0.0004〜0.0005秒と幅があります)。インパクトでフェースの向きを合わせようとしても、手で押し込もうとしても、間に合わない時間です。ボールがどう飛ぶかは、ヘッドがボールに届く前に、ほぼ決まっています。だから、クラブに仕事をさせます。
体の調子は、毎日変わります。それでも、クラブの性質は変わりません。性質を知って、邪魔しない振り方を練習しておくほど、その日の調子に左右されにくくなります。
体は毎日変わる
クラブの性質は変わらない
こんにちは、オンラインゴルフコーチの鳥居俊佑です。これまでオンラインレッスンで3,000名以上を指導してきました。この記事は、ゴルフクラブの取扱説明書です。次の順番でお伝えします。
- クラブに仕事をさせると、変わること
- あなたが、どこでクラブの邪魔をしているか
- クラブが動きたがる、3つの性質
- スイングの5つの場面で、クラブに任せる動き
- 練習場でやること
クラブに仕事をさせると、変わる3つのこと
1つ目は、勝手にボールに当たることです。クラブの勢いを止めずに振れるようになると、当てにいかなくても、ボールに当たる感覚がつかめてきます。
2つ目は、楽に振れて、ヘッドも加速することです。自分でコントロールしないといけない所が減るので、楽に振れるようになります。そのほうが、ヘッドもスパンと加速してくれます。
3つ目は、調子が悪い日も、変わらないほうを頼りに振れることです。人の体は、毎日同じではありません。よく動く日もあれば、動かない日もあります。それでも、クラブの動き続けようとする性質は、日によって変わりません。その変わらないほうを頼りに振れば、その日の調子に左右されにくくなります。
オンラインレッスンの受講生で、50代のYさんは、3ヶ月でドライバーが190ヤードから220ヤードになりました。
自分が頑張れば頑張るほど、クラブは仕事をしなくなります。オンラインレッスンでも、よくこうお伝えしています。
あなたは、どこでクラブの邪魔をしている?
クラブの邪魔をするのは、ゴルファーなら誰にでもある「本能」です。ゴルフは、本能に逆らうスポーツでもあります。スイングの5つの場面で出やすい本能を並べました。当てはまるものを数えてみてください。
- 場面1 始動:ヘッドから動かしたくなる
- 場面2 ハーフスイング:腕でクラブを持ち上げたくなる
- 場面3 トップ:無理に大きく振りたくなる
- 場面4 切り返し:トップで止めたくなる、クラブをボールに向かわせたくなる
- 場面5 フォロー:インパクトで止めたくなる(フィニッシュまで振り切れない)
始動だけは、全員が最初に撮って確かめてください。上の場面でクラブの軌道やフェースの動きがずれていると、その先はどう動いても整わないからです。ずれていたら、始動から直します。始動のあとは、始動のほかに当てはまった場面へ、上から1つずつ進みます。始動にだけ当てはまった方と、どれにも当てはまらなかった方は、場面2から順に確かめてください。
当てはまらなかった方も、一度撮ってみてください。自分ではクラブを置いてきているつもりでも、映像で見ると、意外と遅れていないことがよくあります。
クラブが動きたがる、3つの性質
本能がクラブの邪魔になるのは、クラブに動きたがる性質があるからです。ゴルフクラブは、ちょっと変な形をした道具です。形が変わっている分、動き方にもクセがあります。ここで言う性質は、クラブがどう動きたがるか、のこと。3つとも、ドライバーからウェッジまで同じです。
①動き出したら、動き続けようとする

クラブは、一度動き出すと、その方向に動き続けようとします。途中で勢いを止めると、下ろしてくるときに軌道がぶれやすくなり、スイングスピードも出なくなります。
バケツに水を入れて、ぐるぐる回したことがある方も多いと思います。回し続けるから、水はこぼれません。途中で止めると、こぼれます。クラブも同じです。
▶ この場面の動画:70台目指すなら身につけるべきゴルフの基本(YouTube)
動画の中では、この動きを「振り子」とも呼んでいます。
②フェースは、開く方向に動き始めると、開き続ける

クラブヘッドの重さは、偏っています。そのため、フェースは開く方向に動き始めると、そのまま開き続けようとします。フェースが開いた状態で握って、そのまま上げると、バックスイングでクラブの重さが、さらに開く方向にかかってしまいます。
スイング中、フェースは開いて、閉じていきます。ただ、開きすぎると、大きく戻さないといけません。戻りすぎれば左へ引っかかり、開いたまま当たれば右へ飛びます。だから、構えの握り方で前もって整えておきます。振っている最中は、手で合わせにいかなくて大丈夫です。向きをまったく変えずに振ろうとすると、スイングスピードが出なくなります。
③引っ張り合いを受け止めると、シャフトはしなって戻る

切り返しで、体は戻り始めているのに、クラブはまだ上がろうとしている。この反対向きの力(引っ張り合い)が、右手の人差し指にかかってきます。ここで受け止めると、シャフトがしなって、しなったシャフトが戻ってきます。受け止められないと、シャフトはほとんどしならず、ヘッドスピードも上がりません。受け止めるときも、余計な力みは抜いておきます。クラブの勢いで、人差し指に圧がかかってくるようにします。
しなりは、自分で作りにいかなくて大丈夫です。体が止まらずに動き続けて、うまく引っ張ってくることができれば、勝手に生まれてきます。
▶ この場面の動画:【飛距離アップ】ためを作るから飛ばない(YouTube)
3つとも、クラブが自分でやってくれることです。次の5つの場面で、どこで邪魔をしやすいかを見ていきます。
場面に入る前に、3つだけ
1つ目は、握り方を先に整えることです。握り方が整っていないと、力を抜いたときにクラブを支えられません。力を抜いてもクラブが暴れない握り方を先に整えて、そのあとで、グリップの圧力を下げていきます。目安は、マックスの20%くらいです。握り方は、フェースの開きやすさ・閉じやすさにも関わります。握り方は、手首の使い方の記事でもお伝えしています。
2つ目は、スマホを2か所に置くことです。体の正面と、飛球線の後ろに置きます。確かめるときは、撮った動画をその場面で止めて見ます。スイングは止めずに振ってください。体の動きを確かめるのは、練習場でこの記事の練習をするときと、撮った動画を見るときだけ。ボールを打つときは、クラブの動きに任せて振ります。
3つ目は、始動だけは全員が最初に確かめることです。
スイングの5つの場面で、クラブに任せる
場面1 始動|ヘッドから動かしたくなる

体が先に回り始めて、腕とクラブは少し遅れてついてきます。遅れて動き出したクラブには、勢いがつきます(性質①)。
ヘッドから動かすと、フェースが開く方向に動き始めて、そのまま開き続けます(性質②)。腕で勢いをつけようとすると、クラブには勢いがつかないので、トップまでずっと自分で持ち上げることになります。
正面から撮って、体の回転に、腕とクラブが少し遅れてついてきているかを確かめます。かなり極端にクラブを置いてくるつもりでも、映像で見ると、意外と遅れていないものです。
腕で持ち上げてしまう方は、腕で持ち上げるバックスイングの直し方もあわせて読んでみてください。
場面2 ハーフスイング|腕でクラブを持ち上げたくなる

ハーフスイングは、左腕と地面が平行になる所までの振り幅です。
上げていく途中で、ヘッドが手の動きを追い越していきます。手首は、クラブの勢いで曲げられます(性質①)。手の動きをヘッドが追い越して、手首が曲がりきったあたりが、ハーフスイングの位置です。
撮った動画を、左腕が地面と平行になった所で止めて見ます。正面からは、左腕とクラブの角度が90度近くまで来ているか。後ろからは、シャフトが極端に寝たり立ったりせず、少し斜めか。
▶ この場面の動画:手首の動きが勝手に決まるバックスイング法(YouTube)
ハーフスイングのやり方は、ハーフスイングの正しいやり方の記事でくわしく解説しています。
場面3 トップ|無理に大きく振りたくなる

無理に大きく上げなくて大丈夫です。体が回る所まで上がったら、そこで待たない(性質①)。
トップの位置は、人それぞれです。プロのトップの位置も、結構ばらばらです。形で決めなくても、切り返しで重さが右手の人差し指に乗ってくる、その感覚が、自分のトップの位置になります(場面4)。
後ろから撮って、肩のラインと左腕のラインが、おおよそそろっているかを確かめます。少し低くても、少し高くても大丈夫です。トップの位置が決まらない方は、場面1・2を見直してください。
場面4 切り返し|トップで止めたくなる、クラブをボールに向かわせたくなる

クラブが上がり切る前に、胸から回り始めます。体は戻り始めているのに、クラブはまだ上がろうとしている。このとき、クラブの重さが右手の人差し指(第2関節と第3関節のあいだ、ふくらんでいる所)に乗ってきます。この引っ張り合いを受け止めると、シャフトがしなります(性質③)。止めないから、勢いも続きます(性質①)。
クラブは、自分でボールに向かわせなくて大丈夫です。体が戻り始めていれば、クラブは勝手に降りてきて、インパクトに向けて良い動きをしてくれます。当てにいかなくていいんです。
スマホのスロー撮影で、トップで体もクラブも止まっていないかを確かめます。
切り返しの動きは、アイアンのトリセツでもくわしくお伝えしています。
場面5 フォロー|インパクトで止めたくなる

インパクトを、スイングのゴールにしない。インパクトで止めようとすると、ボールに届く前から、ヘッドスピードが落ちてしまいます。
ボールを打つ前に、「ここまで振り抜く」を決めておきます。最後までクラブに仕事をさせると、クラブの勢いで、そこまで振り抜かれていきます(性質①)。
正面から撮って、インパクトで、アドレスより体が目標の方へ回っているか。手が左の腰のあたりに来たとき、クラブが手を追い越しているか。この2つを確かめます。
▶ この場面の動画:フォローで左ひじが抜ける人はこれです(YouTube)
練習場でやること
練習は、本能の一覧(あなたは、どこでクラブの邪魔をしている?)と同じ順番で進めます。始動を最初に確かめて、そのあと当てはまった場面へ進みます。
- 撮る。スマホを体の正面と飛球線の後ろに置いて、いつも通り5球。今のスイングを残しておきます
- 始動を確かめる。正面の動画を止めて、体の回転に腕とクラブが少し遅れてついてきているかを見ます(場面1)。ずれていたら、3のマットの縁の練習へ
- マットの縁の練習(場面1・2)。ヘッドの後ろ側を、マットの縁に引っかけます。手とヘッドが動かないように、胸まわりを右に回していきます。これ以上回らない所まで来たら、ヘッドをマットから離して上げていきます
- 当てはまった場面へ。始動が整ったら、本能の一覧で始動のほかに当てはまった場面の確かめ方を、上から1つずつ見て、その場面の動きと動画で練習します(始動にだけ当てはまった方と、どれにも当てはまらなかった方は、場面2から)

マットの縁の練習は、クラブの勢いで、手首が曲げられてくる感覚がつかめれば、できています。グリップの圧力は、できるだけ柔らかく。クラブはドライバー以外で、迷ったら9番アイアンで大丈夫です。ボールを3球打ったら、この練習を1回入れてください。
クラブごとのトリセツ
動きたがる3つの性質は、どのクラブも同じです。長さやロフトなどの作りは、クラブごとに違います。たとえば長いクラブほど、下ろしてくるとき、体に対してクラブが遅れてくる量が多くなります。作りの話は、クラブごとのトリセツでお伝えしています。アイアンは、アイアンのトリセツ(ハンドファーストが一番強くなるのは、切り返し)にまとめました。
まとめ:クラブの勢いに任せるほど、考えずに振れる
クラブの勢いに任せるほど、自分でコントロールしないといけない所が減って、楽に振れるようになります。そのほうが、ヘッドも加速してくれます。
練習場で場面ごとに確かめておくほど、コースでは考えずに、クラブの動きに任せて振れるようになります。
よくある質問
クラブに任せたら、コントロールできないのでは?
腕でコントロールしようとすると、かえってぶれてしまいます。体が先に動いて、腕とクラブがついてくれば、手で合わせる所が減っていきます。まずは場面1の始動から確かめてみてください。
体を先に動かすのに、クラブに任せるとは、どういうことですか?
最初のクラブの勢いは、自分でつける必要があります。体を先に動かすのは、そのためです。そこから先は、クラブの勢いに任せて上げていくので、自分で操作する所がかなり少なくなります。ついた勢いを、自分で止めたり、足したりしない。これが「任せる」です。
クラブの重さが感じられません
まず、握り方を見直してください。力を抜いてもクラブを支えられる握り方ができたら、グリップの圧力をマックスの20%くらいまで下げます。余計な力が抜けるほど、クラブの重さは感じやすくなります。シャフトとヘッドの重さのバランスで、ユーティリティは重さの感覚をつかみやすいクラブです。
番手ごとに、振り方を変えたほうがいいですか?
基本的には、どのクラブも同じスイングで大丈夫です。動きたがる3つの性質は、ドライバーからウェッジまで同じです。アイアンは上から、ドライバーは下から入りますが、それはボールの位置や足幅、シャフトの傾き、長さで、クラブが降りてくる地点が変わるからです。切り返しの動きは、どのクラブも同じです。作りの違いは、クラブごとのトリセツを見てください。

コメント